2018年 JIRA年頭所感


一般社団法人日本画像医療システム工業会
会長  小松 研一

 2018年の年頭にあたり謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 一般社団法人日本画像医療システム工業会JIRAは1967年の発足から、51年目を迎えました。
 50周年の節目だった昨年は、「50周年記念イヤー」として1年間にわたり各種の記念行事を行いました。年頭では記念ロゴをご紹介し、その後、記念誌として「医療機器産業入門」の発行、JIRAホームページリニューアル、JIRA50周年記念式典を6月に開催し創立以来50年に渡り支えていただいた会員企業の皆様に感謝の意味を込めて表彰させていただきました。8月には、日本放射線技術学会(JSRT)、日本診療放射線技師会(JART)との三団体代表理事・会長座談会の開催、12月には「AIを用いた医用画像診断」をテーマに「JIRA画像医療システム産業研究会」と一連の記念行事を行ってまいりました。何らかご利用いただける情報提供ができたとすれば幸いに存じます。
 当工業会に30年以上にわたり貢献いただいた和迩理事が昨年秋の叙勲で旭日双光章を受章されました。これまでの当工業会のみならず医療機器産業界全体に対するご貢献に紙面をお借りして感謝の意を表します。

 JIRA発足当初、フィルム撮影のX線診断装置を中心とした機器産業でありましたが、CT、MRIなど新たな画像診断システムが次々と開発され、より早期の診断が可能になりつつあります。まさにデジタル革命が医用画像診断技術さらには医療の枠組み全体の変化を牽引した時代ではなかったかと思います。
 診断画像検出・表示の中心だったフィルムに取って代わり、フラットパネル検出器あるいは半導体を中心とするデジタル検出器が使われ、診断画像など医療データは高精細液晶モニターに表示され、フィルム搬送システムはデジタルネットワークに代わり、フィルム保管庫はデジタルデータベースになりました。これらのデジタル技術革新は医療の在り方を全世界的に変えてきたといえると思います。

 次の半世紀に向け、牽引が期待される新たなイノベーションの芽があちらこちらで萌芽し始めているように思います。特に近年注目されているのはAI技術ではないでしょうか。AIの医療応用は様々に検討されておりますが、診断画像解析分野で開発が先行しているように思います。Chicago大学の土井教授により提唱されたCAD(コンピュータ検出支援)開発が進展する過程でニューラルネットが応用され、更に機械学習、とりわけディープラーニングの導入と、進化を続けているようです。今後さらにCPUの高速化は進み、学習に必要な数十万枚以上とも言われる画像データを短時間で学習することも可能になるでしょう。大量の医療データベースや正解付きの診断画像のデータベースの構築も始まっており、その活用の仕組みについても政府主導で検討が始まっています。しかし、医療の分野ではAIの計算結果だけを信用してしまうと、実態医療とかけ離れたことになる危うさを秘めているように思います。AIの出した結果の説明を辿れない可能性もあり「AIのうそ」を見破れない課題もあります。この方面の研究が待たれるところです。
 AIを使いこなし、線量管理や精度管理を含む医療安全と医療の高度化による質の向上などさらなる医療の高度化、質の向上に期待するとともに、大量の医療データベースを利用したCyber空間上でのヒューマンセントリックメディスン(HCM:個人化医療)を目指した活用が期待されます。薬機法の承認基準や臨床研究法、改正個人情報保護法、医療ビッグデータの構築と活用方法(次世代医療基盤法)など見直すべき法整備も必要となってくるでしょう。

 さて、本年は第7次医療計画・第7期介護保険事業計画のスタートとなります。厚生労働省の進める、「施設完結型医療から地域完結型医療への転換、そして医療機能の分化・連携・補完が可能な医療提供体制へ」の方針を具体化していくこととなります。実現するための共同利用制度の導入や遠隔画像診断の仕組み構築、特定保守管理医療機器に対する保守点検の普及、適正な画像管理・線量管理などを推進するため、画像医療システム機器の供給者の立場から、医療の質の向上や安全性の向上に努めてまいりたいと思います。また、国際医療機器規制の国際整合化に向けて、DITTA(Global Diagnostic Imaging, Healthcare IT and Radiation Therapy Trade Association)副議長としてIMDRF(International Medical Device Regulators Forum)に提言をしてまいります。

 JIRA会員の皆様のご理解とご協力をお願いするとともに、皆様のご健勝とご多幸をお祈りして、新年のご挨拶とします。

一般社団法人日本画像医療システム工業会
会長  小松 研一