スライドは私が国立がんセンター在職時に治療した症例の中で、治療後11年までの間に死亡した4214例について、死亡原因を調査した集計を示しています。当然のことですが原病死つまり癌のため死亡した方が大部分でありました。しかし治療に関連した死亡と私が推定した方が3.3%もありました。これは1960年代の癌治療の実情を示す数字であります。当時の国立がんセンターでは、特に放射線治療では進行した病期の症例が多かったので、やむをえなかったと思います。 放射線治療に関連した死亡と推定した数の大部分は肺癌と食道癌の症例で、原病死と区別しがたい場合が多くありました。肺癌では放射性肺炎、食道癌では穿孔がその代表ですが、フルドーズの線量を照射した症例では治療関連の死亡に入れてあります。この時期は高エネルギーX線治療の初期であり、まだX線CTもMRIもなく、治療計画は精密とは言いかねる時代でありました。 表から分かるように、放射線治療関連の死亡は遅れて出現することが多いので、綿密な経過観察とを必要とします。 治療計画にあたっては晩期傷害の可能性を充分に考慮しなければならぬという教訓を得ました。
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