スライドは前のスライドの1960年代から30年後の放医研の重粒子線治療後の正常組織の反応つまり後遺症の集計を示しています。この30年の間に画像診断技術は驚異的に進歩しました。そして治療の主役は、深部組織に後障害を起こしやすい高エネルギーX線から陽子線あるいは重粒子線に交代し始めています。この技術的進歩が如何に治療にともなう副作用を軽減したかを示すために比較しているのです。副作用の軽減は治療成績の改善と同等あるいはそれ以上に重要な問題になっています。 、1994年に放医研で重粒子線治療を開始してから8年になりますが、治療に関連する死亡はスライドに示されるようにまだ一人もありません。このことはきわめて高く評価されてよいと思います。W度と判定された重篤な障害の発生も1%以下であり、しかも適切な治療により回復しています。 放医研重粒子線治療のプロトコールは注意深く作成されていて、適応と認められた症例のみに治療が行われていて、照射線量を漸増方式で決定しており、治療にともなう有害事象(副作用)を最小限にとどめる努力をしています。このような配慮が診断治療技術の進歩と相まって重篤な合併症の防止に役立っている。つまり無理な治療はしないということです。粒子線治療に対して治療成績の向上を第一に求める声が多いようですが、私は副作用を極限まで減らせる治療であることを強調したいと考えています。 又この8年間に医療事故が全くなかったことも特筆されてよいでしょう。
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