現行の化学療法等での治療効果の判定の多くは、治療により腫瘍が小さくなったかどうかで、CRとかPRとか判定して評価しています。しかしこれは癌の治癒を示しているとは思われません。私が患者とともに望んでいるのは、癌の大きさが小さくなったかどうかの判定ではなく、たとえ大きさが変わらなくても、癌が癌でなくなったかどうか、つまり癌が治癒するのかしないのかの判定であります。PETによる治療効果の判定はようやくこの絶対的な判定の第一歩を踏み出したといえるでしょう。 私はこれに関連して、何時も思い出すのは、日清戦争の時の軍歌「勇敢なる水兵」の中の「まだ沈まずや定遠は」 の一節です。癌で苦しむ患者と重傷で瀕死の水兵がオーバーラップし、癌と清国軍艦定遠がオーバーラップするのです。私がもと海軍軍医の一人であったからかも知れませんが。判定基準を決めるには医師の考えだけでなく、患者の心情を汲み取らねばならないと考えています。
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