スライドは1945年の戦後から現在までの代表的な頭頚部癌治療成績を年代順に示しています。頭頚部癌は子宮癌とともに早い年代から放射線治療の対象となり良好な成績を挙げていて、塚本先生がもっとも得意とされた領域でありました。 1950年代まではラジウム治療の時代、1960年代から高エネルギ-放射線治療、1980年以降は再建手術と化学放射線治療の導入の時代といえるでしょう。 年代別の成績を概観しますと、治療後5年生存率は塚本時代の27%から国立がんセンター創設時代には55%と倍増しております。この数字はまさに戦後の日本の国力の回復を示す数字であると私は考えております。戦後まもなくのあの窮乏の時代の日本で、塚本先生が残された成績はまことに立派でありました。 又塚本先生の時代は名人の時代、国立がんセンター創設以後の時代は塚本先生を受け継がれた竹田千里先生の外科と私が受け持った放射線治療の技術革新の時代、1980年以降は海老原先生に代表される名人の時代の再来といえます。 今日これからお話しするのは、21世紀を迎えて再び到来した放射線治療の技術革新とその成果への期待であります。つまり時代の波は、名人の時代と技術革新の時代の形で繰り返されるということです。 1960年代の国立がんセンターの治療成績に比べて海老原先生の時代では生存率が10%向上しております。しかもこれは機能温存手術を徹底的に追及された上での成績ですから立派な成績であります。その詳細について昨日の会長講演で海老原先生が話されましたが、まことに謙虚なお話でした。これが本当の名医ですね。 *のマークをつけた時期の下咽頭癌の成績がよかったことに注目してくだとい。これには当時の池田首相の入院治療と関係があります。
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