X線透視台の進歩
Progress of Diagnostic X-Ray Tables
Many years have passed since X rays were first applied to medical diagnosis,with diagnostic X-ray tables improved steadily in company during the while.The X-ray tables herein described are classified into three:the conventional type,the remote-controlled type for X-ray television and the mass-screening type for detecting gastric cancer.
[1] まえがき
X線を利用して人体を透視することにより医学診断に役立てようという試みはX線が発見された当初から行なわれた。
その後長い歴史を経た今日,X線による診断法は種々な診断法のうちでも非常に有力な方法となり,その応用分野はますます広がりつつある。わが国においてはがんによる死亡率は年々増加しており,特に胃がんによる死亡の割合は非常に高い。したがって国民一般のがんに対する認識は高まり,がん対策がとりあげられるようになってきている。
このようながんの早期発見に対してもX線診断はきわめて有効な手段であり,そのためのX線診断装置は年々進歩改良されており,とりわけわが国では消化器系の診断に用いるX線装置はけい光増倍管(image intensifier)とテレビジョンを組み合わせたX線テレビジョン診断装置の開発とあいまって非常な発展を示している。
X線テレビジョン装置の診断への応用と実用化は従来のX線診断法に画期的な進歩発展をもたらしたもので,X線診断医の暗室作業からの解放と,X線被ばく量の軽減という大きな利点から現在では欧米諸国においてはもちろん,わが国においても多数の装置が日常のX線診断業務に使用されており,今後ますます増加するものと思われる。
本稿では当社において開発されたX線診断用透視台の現状と将来の動向について述べる。
[2] X線透視台の種類と特長
X線診断を行なうために患者を立位,臥位,斜位,逆傾斜など種種な姿勢において,頭から足まで患者の任意の部位を透視できるようにしたものがX線透視台である。
通常は透視だけでなく,透視したX線像をそのまま写真撮影するための装置(速写装置またはスポットフィルム装置と呼ばれる)も組み込まれているので,正確にはX線透視撮影台というべきものであるが,ここではX線透視台としておく。
2.1 X線透視台の一般的構成
X線診断装置の構成は図1に示すとおりである。
![]() 図1. X線診断装置の構成 Construction of diagnostic X-ray apparatus
図において患者をのせた天板とこれを支える架台,患者を任意の角度に傾斜させるための起倒駆動部から構成される透視台があり,この透視台にはX線管と透視撮影部を患者をはさんで相対して組み込むことにより患者の透視像を観察し撮影することができるようになっている。
透視撮影部はX線管と対になって患者にたいして三次元的にすなわち上下,左右,前後方向に動かすことにより患者の任意の部位を自由に透視撮影することができ,また患者をのせた天板が上下,左右に二次元的に移動することのできる透視台もある。
透視部にはX線を可視光線に変換するためにけい光板を用いていたが,近年けい光増倍管,テレビカメラ,モニタを組み合わせたX線テレビジョン装置が開発実用化され,後に述べるような種々の利点によりX線テレビ化が急速に進行している。
X線診断装置は,X線透視台のほかにX線を発生させるX線管と,これに電源を供給し制御する高圧発生器,制御器等で構成されている。
X線透視台の分類にはいるものとして広義に解釈すると,ブッキー撮影台,秘尿器寝台,循環器診断用寝台等もあげられるが,本稿ではわが国で一般に透視台として呼称されているものをかりに次の3種類,すなわち普通形透視台,遠隔操作形透視台,胃部間接撮影用透視台に分類して説明する。
2.2 普通形透視台
医師が透視台について直接けい光板を操作しながら患者の透視撮影を行なうもので,現在使用されているX線透視台では最も古い歴史をもち,広く病院,診療所等で使用されている。一般に透視台といえばこの形式のものを指すことが多い。
透視台の進歩の過程を簡単にたどってみると,初期の透視台は水平位または立位専門の透視を行なうものであったが(図2),その後透視台の天板部分を手動で回転することにより立位および水平位に固定してその位置で透視診断をできるようにしたものが現われた。
![]() 図2. 初期のX線透視台 X-ray table in the early stage
この頃のものはX線管とけい光板は一対になって透視台と一体になった支持器に組み込まれて上下,左右の自由に移動して透視および撮影ができるようになっていた。また天板下面にはブッキー装置を組み込むことによりブッキー撮影のできるものもあった。
このような形式の透視台はわが国においてはすでにまったく姿を消してしまっているが,欧州のメーカでは後進国向けとして現在でもなお販売をしているようである。
次の発展の段階では透視台とX線管支持器の分離が行なわれ,透視台は傾斜自在形となり,立位から水平位さらには逆傾斜までと任意の角度に傾斜させて透視撮影を行なうようになった(図3)。
![]() 図3. 現在の透視台の原形 Prototype of modern X-ray table
ここにおいて現在使用されている透視台の基本的構造が確立されたといってよく,その後の進歩は個々のエレメントの改良あるいは操作性の向上,放射線防護の改良,より広範囲の診断に使用できるようにというはん用化等に向けられている。
透視台本体の改良と同時に透視撮影部の革新もいちじるしく,けい光板で透視しかできなかったものが,スポットフィルム装置の開発により透視中任意のタイミングで各種サイズのX線写真を撮影することができるようになった。さらにけい光増倍管の使用により明るい部屋での透視診新を可能にし,また16mmシネ撮影,70mmスポット撮影,テレビジョン装置と組み合わせてビデオテープレコーダに記録するなど,各種のX線像記録方式が開発された。
この形式の透視台は長い年月をかけて改良発展してきたものであり,一つの透視診断装置として基本的構成,診断方式は確立されており,われわれ装置メーカとしてはさらに使いやすい,診断能率の向上を計った装置の開発,より広範囲の診断に使用できるはん用化に努めなければならない。
2.3 遠隔操作形透視台
X線による透視診断を遠隔操作で行なうことの利点は医師のX線被ばくを皆無にできること,診断能率を向上し医師の疲労を軽減することができるなどであるが,これが可能になったのはけい光増倍管の開発におうところが大きい。
従来は透視にはもっぱらけい光板が用いられていたために像が非常に暗く,そのうえ記録が思うままに行なえなかった。このためややもすると透視は写真撮影にくらべて重くみられない傾向もあった。
したがって透視像を明るくすることによって透視診断を暗室から解放し,同時に運動の記録をも可能にしようとする努力はかなり以前から試みられてきた。その成果がX線けい光増倍管の発達であり,さらにすすんでX線テレビジョンの開発となって現われた。
現在では完全に普及段階となり,大病院から個人病院にいたるまで,心血管造影や消化器系の診断など各種X線診断に用いられている。
わが国においてはX線テレビジョン装置というとすぐ遠隔操作式透視台を思いうかべるほどであるが,この遠隔操作によるX線診断はX線テレビの特長を最もよく生かしたものであり,この方式による装置が圧倒的に多く使われている。しかしながら欧米諸国においては先に述べた普通形透視台にX線テレビジョンを組み合わせたものが多く,遠隔操作式の透視台はあまり使用されていない。
これは診断部位の相異によるものである。すなわち心臓,血管関係のカテーテルによる検査や,ゾンデによる気管支造影あるいは腰つい造影などX線像により確認しながら診断を行なう必要のあるときは当然医師は患者に近接してこれらの操作を行なわなければならないし,また手術を伴うことも多いので,遠隔操作でこれを行なうのは危険なことが多い。
欧米においてはこのような診断が多く消化器系の診断が比較的少ないのに対し,わが国では消化器系,特に胃の診断が圧倒的に多いので,それを主目的とした装置が発展して遠隔操作形透視台となったのである。また遠隔操作といってもいろいろあり,近接操作を主にして一部遠隔操作可能なものから完全遠隔操作形まで,診断目的に応じて各種形式の透視台が開発されている。
ここでX線テレビジョン装置の利点をも含めて遠隔操作形透視台の特長を次に述べる。
(1)X線被ばく線量の減少
X線テレビジョン系には各種の方式があるが,現在最も一般的に用いられているけい光増倍管とビジコンカメラとの組合せ方式による透視診断時のX線放射条件は,在来のけい光板方式に比べると約1/2ないし1/3となっている。
したがって,被検者のX線透視診断にともなうX線被ばく量が減少するのはもちろん,近接操作をする医師の散乱線被ばく量も減少することができる。また遠隔操作法によれば医師の散乱線被ばく量は皆無になる。
(2)診断能率の向上
X線診断を明るい透視室で行なうことができるので,作業能率を向上し,誤操作の減少を計ることができる。
また患者の不安感をなくて,体位の変換その他の動作が円滑に行なえるので,一人当たりの診断所要時間を減少することも可能となる。
(3)透視診断精度の向上
けい光板による透視診断の最大の欠点は透視像が非常に暗いということがある。したがって医師はあらかじめ暗闇に目をならしてから診断を行なわなければならなかった。そのうえ識別能のよくない桿状体で像を見るので精度がよくない。
これに比べてテレビ像は明るいので識別能のよい円すい体で見ることができるので,生理的にも像の識別能が向上することになる。
すなわちけい光板による透視では,けい光仮に像があらわれていても肉眼でこれを識別することができず,テレビ像では十分に識別することができるのである。
(4)記録方式
X線透視像が非常に明るく,またテレビジョン装置と組合せをするなどの方法で,16mmフィルム,35mmフィルムによるX線映画撮影またはビデオテープレコーダにより動的診断を行なうための記録が可能となった。
X線テレビジョン装置は, この二つの方法によってX線透視診断と同時に記録し,その後においていつでも記録を再生し,動的診断をすることができる。
(5)同時診断
X線テレビジョンのモニタを増設することにより多人数で透視像を同時観察することができるので,インターン医学生の教育,あるいは多数の医師による同時診断などに有用である。
以上,X線テレビジョンによる遠隔操作形透視台の特長を述べたが,これらの利点によりわが国では現在X線診断装置のテレビ化が急速に進められている。
しかし,消化器系診断用の遠隔操作形透視台として一応満足できるといわれる装置が完成されてはいるが,近接操作のように医師が患者に密接して,体位の変換,触診,圧迫などの微妙な操作を行なうようなことがなんの束縛もなく自由にできるというところまではいっていないのが現状である。したがってわれわれ装置メーカとしてはこの方面でのいっそうの研究,改良が必要であろう。
2.4 胃部間接撮影用透視台
さきにも述べたようにがんによる死亡率は年々増加しており,なかでも胃がんによる死亡の割合はわが国において非常に高い。したがって胃がんの早期発見と治療の必要性が大きくさけばれ,胃部集団検診が近年胃がん対策の中で重要な役わりをはたすようになってきた。このような目的で大量の被検者を能率よく短時間で検診するために開発されたのが胃部間接撮影用透視台である。当初胃部集団検診用X線装置は胸部撮影用の間接X線装置を改良して用いていたが,その後,被検者の増加にともなって胃部集団検診専用の装置が使用されるようになった。
ここで胃部集団検診用の間接撮影装置に要求される性能を考察してみると,
(1)検診能率のよいシステムであること
(2)各種の操作をできるだけ簡易化,自動化し操作者の疲労を軽減すること
(3)透視部は観察のしやすい方式であること
(4)間接X線写真の精度がよいこと,すなわち解像度,対照度のよいものであること
(5)透視および撮影線量が少なくてすむこと
(6)集団検診用として自動車に積載して都市部だけでなく山間部をも巡回しなければならないので,悪路による振動や温度変化に耐える信頼性のある装置でなければならない
(7)電源事情の悪い場所でも十分その性能を発揮できること
などがあげられる。これらの要求を満たすため,現在いろいろな方式のX線間接撮影システムが開発されているが,それぞれ一長一短があり,どの方式が胃部集団検診に最適であるかという結論はできないのが現状である。したがってここでは胃部間接撮影装置の各方式とその特長について簡単に述べる。
まずX線透視台の基本的構造としては
(1)X線管球が天板の上側にある方式
(2)X線管球が天板の下側にある方式
の2方式が使用されている。現在当社で開発使用されている透視台はすべて(2)のX線管球が天板の下側にある方式である。これは,暗箱,ミラーカメラ,けい光増倍管等が天板の上側で上下移動する方式となっており,透視で位置決めを行なうときこの操作を行なう必要があるので,X線管球が天板の上にある場合にくらべて操作が多くなるが,撮影時はけい光板部を被検体に密着することができるので,拡大率の小さな写真が得られるとともに,一般の普通形透視台と同じ感覚の像が得られるので読影上有利であるからである。
間接撮影方式については次の4方式が開発されている。
(1)暗箱+屈折レンズカメラ方式
暗箱前面に30×30cmのけい光板を使用し,そのX線像を透視および70mm判自動X線カメラで撮影する方式である。これは現在実用されている胃部間接撮影装置では最も多く使用されているものであるが,撮影線量が多く解像度も比較的悪いのが欠点である。
(2)ミラーカメラ方式
現在ミラーカメラ式撮影装置は国産,輸入品を含めて各種サイズのものがあるが,胃部間接撮影用としては,けい光板30×30cmに70mm長尺フィルムカメラを組み合わせたものが最も多く使用されている。
ミラーカメラ方式の特長は明るいレンズ(屈折レンズカメラはF:1.4程度であるが,ミラーカメラはF:0.63で,屈折レンズカメラの約5倍の明るさになっている)を使用しているため,撮影線量は比較的少なくてもよく,また解像度もよいことである。
(3)けい光増倍管+屈折レンズカメラ方式
9インチのけい光増倍管と70mm判自動X線カメラを組み合わせた方式であるが,この方式ではX線テレビジョンとの組合せができるので医師は明るいへやで透視による機能診断も可能となる。また撮影線量がきわめて少なくてよいので,X線管焦点が極端に小さくできるから拡大撮影に使用することもできる。
しかしけい光面の直径が9インチ(約23cm)と小さいため胃部が欠けることがあるのが欠点である。
(4)ミラーカメラ+多段形イメージ管方式
これはさきに述べたミラーカメラの透視部に多段形イメージ管とテレビジョン装置を組み合わせたものであり,けい光増倍管方式にくらべて透視撮影の視野をけい光板の大きさ次第で任意に設定できること,および多段形イメージ管は小形で,自動車に積載し悪路を長時間運行しても振動に対して相当強いことが特長である。
[3] 最近のX綿透視台
X線診断用の透視台として当社で開発製作している製品は,その診断目的に応じて非常に多くの種類があるが,ここではそのおもなものについて概要を述べる。
3.1 普通形透視台
3.1.1 DT-BAK形透視台 大病院における精密検診用,中級病院の日常一般診断用として現在最も広く使用されている標準的な透視台である(図4)。
(1)起倒範囲は立位より逆境斜15°まで
(2)天板移動範囲は上下各30cm
(3)スポットフィルムは,大陸判縦,四つ切判縦全面と2分割,六つ切判横全面,2分割,4分割撮影可能
(4)一般撮影のためのブッキー装置組込可能
![]() 図4. DT-BAK形透視台 Exterior of Model DT-BAK X-ray table
3.1.2 DT-PBJ形透視台 小病院または開業医院で日常一般診断に使用するために開発された製品で,けい光板部と天板部分とを有機的に連係して動かすことによりけい光板部の移動範囲を拡大し,バランスウエイトを不要にするなどの新機構を採用している。これにより高い性能を維持しながらコストダウンに成功した装置で,非常に操作性のよいのが特長である(図5)。
![]() 図5. DT-PBJ形透視台 Exterior of Model DT-PBJ table
3.2 遠隔操作形透視台
3.2.1 DT-AA形透視台 この装置は特に消化器系診断に重点をおいたはん用多目的装置で,完全遠隔操作形の透視台である(図6)。
![]() 図6. DT-AA形透視台 Exterior or Model DT-AA table
(1)起倒範囲は立位より逆傾斜90°まで
(2)天板は水平時,頭および足方向へ1.5m移動するのでブッキー撮影,アンギオ撮影などに便利である。
(3)スポットフィルム装置には,四つ切判6枚,六つ切判4枚計10枚のカセッテを収容しておき,遠隔または近接制御で任意のカセッテおよび分割サイズを選択,撮影できる。
(4)消化器系診断のため遠隔圧迫操作可能。
(5)X線絞り 透視および撮影画質向上のため,位置サーボによる絞り取っ手と絞りの連動およびスポットフィルム装置と連動して照射部の自動修正が可能である。
(6)けい光増倍管の出力光の一部を検出して,ホトタイマによる自動露出制御と,透視時の自動輝度調整を可能にしている。
3.2.2 DT-AB形透視台 図7はその外観で,はん用多目的装置として遠近両用操作形透視台である。
![]() 図7. DT-AB形透視台 Exterior of Model DT-AB table
(1)はん用多目的使用のため透視台の全周から近寄ることが可能で,水平時の天板高さが比較的低いので便利である。
(2)透視台の起倒範囲は立位より逆傾斜30°までで,その速度は90°/20s と 90°/40sの2スピードである。
(3)多目的使用のためスポットフィルム装置の移動範囲が大きい。移動範囲 長手方向90cm,横方向22cm,前後方向30cm(圧迫方向)
(4)スポットフィルムは,大陸判縦,四つ切判縦,六つ切判横全面,四つ切判縦と六つ切判横2分割,六つ切判横4分割撮影可能
その他の仕様はほぼDT-AA形透視台と同様である。
3.2.3 DT-AC形透視台 この装置は普通形透視台にテレビジョン系を組み合わせて,遠隔および近接操作を可能としたもので,DT-AB形透視台の普及形ともいうべき装置である(図8)。
![]() 図8. DT-AC形透視台 Exterior of Model DT-AC table
3.3 胃部間接撮影用透視台
胃部間接撮影用の透視台として現在当社で開発製品化されている装置は,さきにも述べたようにX線管球が天板の下側にある,いわゆるアンダテーブル形の透視台である。
間接撮影の方式によってそれぞれ異なった形式名が与えられているが,これを組み込む透視台の基本構造,仕様は共通化されている。
胃部間接撮影用透視台の共通的特長
(1)リングスタンド形透視台で自動車積載用としてコンパクトかつ堅ろうな構造である。
(2)けい光板部が被写体に密着するので拡大率が小さく,しかも一般の透視台と同一方向の写真が得られるので,読影上有利である。
(3)透視台の起倒速度が速く,また天板上下,左右の移動範囲が広いので検診能率が高い。
(4)撮影室と操作室が別室にできるので,操作者のX線被ばくの心配がない。
(5)透視観察窓のほかに含鉛ガラスののぞき窓があるので,被検者の状態を観察することができる。
(6)間接撮影はホトタイマで制御されているので,均一な黒化度のX線写真が得られる。
3.3.1 DTP-AA形透視台 この装置は間接撮影に暗箱+屈折レンズカメラ方式を使用したもので,現在最も広く実用に供されている透視台である(図9)。
![]() 図9. DTP-AA形透視台 Exterior of Model DTP-AA table
3.3.2 DTP-CA形透視台 図10はその外観で,ミラーカメラ方式を採用しており,解像度がよく,撮影線量も比較的少なくてすむので急速に普及しつつある装置である。
![]() 図10. DTP-CA形透視台 Exterior of Model DTP-CA table
3.3.3 DTP-FA形透視台 ミラーカメラ+多段形イメージ管方式の透視台で,操作者は明るいへやで透視撮影操作をできるのが特長である(図11)。
![]() 図11. DTP-FA形透視台 Exterior of Model DTP-FA table
[4] X線透視台の将来
診断装置としてX線透視台をみたとき,現在なお多くの解決すべき問題点があり今後の課題として残っている。
ここではX線透視台の将来の方向とわれわれ装置メーカとしてなさねばならない問題点について若干述べておこう。
(1)X線テレビジョンの導入
遠隔操作形の透視台では当然ながらすべてX線テレビジョン装置と組み合わせて使用しているが,普通形透視台でも明るい環境で診断するためにX線テレビ化が促進されるであろう。
米国では現在すでに90%以上の透視台がけい光増倍管あるいはX線テレビジョン装置付となっており,わが国でも今後5年ないし10年の後には暗室でのX線診断は見られなくなるのではないだろうか。
この方向を促進するためにわれわれメーカとしては,装置の性能向上,価格の引下げに努力する必要があろう。
(2)装置のはん用化と専用化
普通形透視台ではより多目的の診断に便利に使用できるようにというはん用化が行なわれ,一方遠隔操作形透視台や胃部間接撮影用透視台のように,ある特定の診断目的を能率よく適確に達成するための専用透視台の開発という専用化が併行し,よりいっそうの発展をするものと思われる。
(3)装置の操作性の向上
医療分野におけるX線診断の必要性は増加し、かつ装置まますます複雑となり,これを操作する医師の作業はふえる一方である。
したがって装置はできるだけ自動化あるいは能率化することとともに,各操作要素は人間工学的見地からの使いやすさ,誤操作の減少などの研究改良が必要である。
(4)完全遠隔操作化
現在開発実用化されている遠隔操作形透視台は消化器系の診断用として一応その目的を達してはいるが,なお細かい操作性の点で満足できるものとはいえない。たとえば操作者の意思どおりに被検者の体位を変え,任意の圧力で圧迫あるいは触診をするといった微妙な操作を遠隔でできるようにするための研究と新技術の開発が必要である。
(5)価格の低減
X線装置はますます大がかりなものとなり,また現時点ではX線テレビジョン装置は相当高価であるため,その普及を阻害する一因となっている。国民健康福祉の向上のためにも,より高性能で,より低価格な製品の開発はわれわれの課題であろう。
(6)信頼性の向上
X線装置がその性能を向上し自動化あるいは遠隔操作化が行なわれるにしたがって,装置はますます複雑となり,また使用ひん度は増大する一方である。したがってテレビジョン系を含めた装置の安定性,信頼度を高めて安心して使用できる装置を作ることは,われわれメーカの重要な責務である。
[5] あとがき
X線透視台は古くから使用されていた装置であるが,X線テレビジョン装置の開発とあいまってここ数年間に急速な発展を示し,現在なお年々進歩改良されている。
本稿ではこの透視台を普通形透視台,遠隔操作形透視台,胃部間接撮影用透視台の三つに分類して現状と将来の問題点について展望した。当社X線装置も医家各位の指導と助言によって研さんをつみ,この分野の医学の発展に貢献できれば幸いである。
文献
(1)中山良明ほか:医用X線テレビジョン装置,東芝レビュー16,4,p.451(昭36-4)
(2)的崎健:新形医用X線テレビジョン,東芝レビュー,20,4,p.390(昭40-4)
(3)牧野純夫ほか:遠隔操作X線診断装置,東芝レビュー,19,10,p.1097(昭39-10)
(4)井出昇:医用X線テレビジョン装置の現状と将来,東芝放射線資料,No.54,1967-Summer
(5)島本雄一ほか:胃集検X線テレビ車の開発に関する研究,第26回日本医学放射線学会(昭42-4)
(6)牧野純夫ほか:胃用X線間接撮影装置,東芝レビュー,19,8,p.896(昭39-8)
(7)井出昇ほか:胃部間接撮影における各種方式の検討,臨床放射線,12,2(昭42-2)
(8)島本雄一ほか:多段形イメージ管を用いたX線テレビ胃集検車,東芝レビュー,22,6,p.735(昭42-6)
(9)佐々木憲一ほか:新形遠隔操作式X線テレビジョン装置,東芝レビュー,22,12,p.1435(昭42-12)
<1>医用機器技術部 *Medical Appliance Engineering Dept.,Tokyo Shibaura Electric Co.,Ltd. |